元図書館司書主婦の読書日記

趣味の読書のブログです。

オール・ノット 〜全部ダメってわけでもない〜

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今回は、柚木麻子さんの「オール・ノット」を読みました。

好きな作家さんの一人ではありますが、表紙が綺麗でジャケ読みです。
 
以下、あらすじと感想。
 
大学生の真央は学費のためにアルバイトを掛け持ちしている。
7月の終わり、スーパーのアルバイトでマネキンのおばさんに温かい紅茶の試飲を差し出される。
アイスティーの素を売っているのだが、お湯で割ったアイスティーは冷えるスーパーの中での仕事にはとても温まりおいしかった。
おばさんはいつも試食品に勝手にバターやスパイスを足しているが、おばさんが試食に立つと必ずその商品は売れるのでそれを店員に見咎められることはなかった。
しかも事務室のパソコンを勝手に私用で使ったりしているという噂だ。
ある日おばさんが一人でお昼を食べているのを見て話しかけてみた。
おばさんの名前は四葉さんといい、おばあさんとお母さんと暮らしていたがもう他界し天涯孤独な身だと言う。
その日から四葉と親しくなり、懸賞で当てたパソコンをもらったり就職のアドバイスをしてくれたり、真緒の生活は変わって行く。
真緒の二十歳の誕生日をお祝いしようと四葉の家に誘われ行ってみると、パーティーのような料理でもてなしてくれシャツの仕立て無料券までプレゼントしてくれた。
雨が降り出し泊まっていくことになったが、四葉は不眠で眠れないのだと言う。
深夜はいつも「姫のジュエリーショッピング」という番組を観ているのだが、祖母も母も不眠でどうでもいい番組を観なければ眠れないのだそうだ。
次の日の朝ピクニックに行こうと誘われ、金の朝が羽ばたくカノンが流れるオルゴール付きの宝石箱を見せられる。
祖母の結婚指輪の宝石や翡翠琥珀などが入っていた。
その中の真珠のネックレスはオール・ノットという結び方でキレてもバラバラにならないようになっていると教えられる。
その時真央は具合が悪くなり「帰ります」と言って帰ってしまうが、四葉が家まで来てくれてビーフティーというスープを飲ませてくれ宝石箱をそのままくれた。
それから数年経ち、真央は横浜に来ていた。
そこで四葉の過去を知ることになるのだが。。。
 
 
勝手な振る舞いをしているけど売り上げがすごいおばさんが実は社長、みたいな展開の話だと思ったら、全く予想が外れていてむしろ想像を超える”波乱万丈女の物語!”という感じで最後まで飽きさせない展開でした。
2章からは四葉の中学生からの人生を書いていて、そこからグッと面白くなる感じです。
舞台が横浜ということで私は馴染みのある景色なのでそこも楽しめました。
脇役のみゃーこやみつ婆もクセつよでいい味を出しています。
更にお話にはジェンダー問題、若者の貧困、非正規雇用問題まで盛り込まれ、ひとごとじゃない感じがしました。
最後はかなり未来の世界になるのですが、テクノロジーの発達など便利になった面は見られるものの、人工流失問題や授業料無償化になっていない未来の姿だったり、本筋とは関係なく”こうなったら嫌な未来”も描かれていてちょっと落ち込む描写です。
主人公の真央は奨学金返済で大変な人生でしたが、最後は希望を持てる展開だったので全部ダメってわけじゃない終わり方で良かったなと思います。
 
そこまで分厚い本ではないのに読み応え抜群です。
気になる方は是非読んでみてください。