嫌いなら呼ぶなよ 〜闇が深い話〜
「眼帯のミニーマウス」
可愛いものが好きなりなの原点は、子供の頃母が作ってくれたミニーちゃんのようなワンピースだった。
ロリータ系の洋服にハマり自己肯定感を上げたが、それにより人から妬まれたこともある。
そして服ではなく顔が大切だと気づき整形にハマる。
眼帯をしてミニーマウスみたいなワンピースを着て目立つ自分が最高に華やかで美しいと思う。
社会人になったある日、会社の同僚に整形を暴露してしまい。。。
全く主人公の性格に共感できないので、逆にいけないものを見ている感じがしてドキドキしながら読みました。
そのままでもおそらく可愛いらしいのに整形に手を出してしまう主人公。
そうすることで目立ちたい、人から注目されたいと言う気持ちは、整形という手段でなくても誰もが持っている心の奥の感情なのでしょう。
それを全面的に表に出せる主人公が羨ましく思ってしまったり。
今時の若者言葉で書かれているので若干読みづらい部分はあるものの、綿谷さんらしい表現も随所に入っていて流石だなと思いました。
「神田タ」
立ち食い寿司&バーでバイトをしている癒し系のぽやんちゃん。
コロナ禍で客足が減っている中、YouTuberの”カンダ”が客として来店する。
カンダに会ったことでファンになり、動画がアップされたらすぐに観てコメントもするようになる。
やがてカンダに認識してもらいたいために過激なアンチコメントをするようになる。
そんな時、バイト先の系列店にカンダが来ていると知り。。。
好きが高じて相手の嫌がることをしてしまうというのは本来子供のすることなのですが、現代では大人でもかなりいますよね。
それが転じてストーカーになってしまったり。
ぽやんちゃんもラストはかなり過激なことをしてしまうのですが、意外にもカンダはアンチをスルーしているという。
カンダが自分とファンを蜘蛛の糸に例えるのが印象的でした。
これくらい強くないと人気商売はやっていられないんでしょうね。
この主人公の行動も全く理解できないと思う反面、好きな人に自分を見てほしいと思う気持ちはわかるような。。。という感じでした。
「嫌いなら呼ぶなよ」
妻楓の親友が集まる新居お披露目パーティーに出向いた霜月。
楓の親友ハムハムと夫のハム夫に出迎えられる中、もう一人の友人千尋とチヒ夫やふた家族の子供達とバーベキューをする。
バーベキューが一区切りつくと2階に行こうと促され、ついて行くと霜月の不倫裁判が始まる。
不倫を繰り返す霜月に、その場の全員が責め立てるが。。。
まず主人公のお花畑さに笑ってしまいました。
こんなやついるか!って思うけど、結構浮気をする男の人ってこんな頭の中なんでしょうか。
自分は全く悪くないしむしろ被害者みたいな感じがムカつくけど本気でそう思っているのでしょう。
というか、奥さんは結婚前に気づかない?
またイラつくのは主人公に対してだけでなく、妻の親友ハムハムに対してもなんです。
こういう人いるよね感が伝わってきて、こちらも笑ってしまいます。
結局奥さんは絆されて離婚はしないんだろうな〜と思ってしまいました。
「老は害で若も輩」
作家の綿谷とライターのシャトル蘭がメールで揉めている。
シャトル蘭が書いたインタビュー記事を綿谷が全く違う文章に直したという。
綿谷は記事に名前が出るのは自分なのだから、都合の良いように直して当然だと主張する。
間に挟まれた編集者の内田は、最初は傍観しているだけだったのだが、やがて巻き込まれていき。。。
この話はフィクションてことでいいんですよね?と思わず疑いたくなるほど、リアルなやりとりで笑えます。
どっちも老害だけど論争の矛先を向けられた若い編集者の狼狽ぶりも、同情するけど笑っちゃう感じでした。
最後は怒りに変わり、酔いも手伝ってやらかしてしまうのも、後で笑い話になるかもしれないけど大問題になりそうですね笑
4本ともモヤモヤしつつも気になって一気に読んでしまうお話でした。
現代らしいお話が書けるのは綿谷さんの最大の魅力かと思います。
気になる方は是非読んでみて下さい。