元図書館司書主婦の読書日記

趣味の読書のブログです。

君の顔では泣けない 〜前例を覆す展開に衝撃〜

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今回は、君嶋彼方さんの「君の顔では泣けない」を読みました。

一言で言うと男女入れ替わり系のお話ですが、展開が新しく斬新でした。

 

以下、あらすじと感想。

 

冒頭は夫と娘と暮らす女性が帰省するシーンから始まる。

新幹線を降り母親に車で迎えに来てもらい自宅へ帰る。

自分の部屋を昔のままにしておくのは、自分がこの体でいる間に義務としてだという。

車でもう一度駅に戻り男を拾って喫茶店へ向かう。

この二人は15年前体が入れ替わってしまった水村まなみと平坂陸だった。

体育の水泳の授業でぶつかった拍子にプールに転落してしまった。

次の日の朝起きると二人は入れ替わっていた。

まなみになってしまった陸の視点で描かれるのだが、朝起きて異変に気づき、トイレに入ると出血していたため驚き、倒れてしまったのでそのまま学校を休んだ。

そこへ陸になったまなみから電話がかかってきたため、二人は喫茶店で待ち合わせする。

戻る方法を模索してもう一度プールに落ちてみたり階段から転げ落ちたりしてみたが元には戻れそうもない。

仕方なくお互いの家族や友達の情報を交換しあうことにする。

陸は母が厳しく父は幽霊のように存在感がなく、弟の禄と仲が良かった。

そしてまなみには彼氏がいることがわかった。

地味なタイプのまなみに年上の彼氏がいることに驚く。

次の日には元に戻っているかもとそれぞれが家に帰るが、翌朝もそのままだった。

仕方なく登校しまなみとどうにかやり過ごそうと話すが、まなみの仲の良い友達2人とは話したこともなく、どう接すれば良いかわからなかった。

部活の時間になりテニス部の練習に参加するが、顧問のセクハラに女性でいることの大変さを実感する。

「俺だったらぶん殴るのに」と言うと、

「それができたらめっちゃ気持ちよさそう」と言うまなみ。

二人は学校でも隠れて会ってお互いの話をするようになる。

互いの家にも出入りするようになるが、まなみの家族は異性の友達を歓迎したが陸の母はまなみに冷たかった。

危惧していたまなみの彼氏月乃くんは映画好きないいやつだったことに安堵する。

ある日まなみが集めている少女漫画を渡すため二人で会っていると、陸の友人田崎に見られてしまう。

誤解されそうになったので、少女漫画が好きで借りていたと嘘をつく。

自分も仲間に入れてほしいと言う田崎に、これをきっかけに3人で過ごすようになる。

それが原因で仲が良かった女友達2人とも距離ができてしまう。

ある日の部活の時間に、いつものように顧問のセクハラにあっていると、陸の姿のまなみがやって来て顧問を思い切るぶん殴る。

周囲は騒然とするが、これに感謝したまなみの母は陸の家にお礼を言いに行く。

しかし陸の母は冷たい対応だった。

翌日母に怒られなかったか確認すると、「坂平くんが思っているほどお母さんって怖くない」と言うまなみ。

夏休み中は頻繁に会えないから日記を書いて、元に戻った時のために備えようと言うことになる。

夏が終われば元に戻っているかもと言う期待に反して、夏休みが終わってもそのままだった。

このまま戻れないかもしれないと怖がる陸に対し、まなみは陸として生きることを決意したかのように過ごしていた。

進学先も東京に行きたいと言うまなみに一緒に東京に行くと言うと、「私は好きなことをさせてもらうから、坂平くんも自由に好きにして」と言われてしまう。

卒業前には月乃くんとも気まずくなり別れてしまう。

式の後田崎と3人でラーメンを食べるが、田崎は進学せず家業を手伝うため3人はバラバラになってしまうと知る。

その日の帰りに学校を辞めた顧問に襲われ、弟の禄に助けられる。

禄は兄の違和感に気づいているようだった。

東京に行く前にせめてもう一度家族に会おうとするが、母はまなみを嫌っているので話はせず、父とは顧問を殴った事件のことを詫びられる。

小さい頃の家族の思い出を思い出すが、その家族との時間はもう二度と戻らないかもしれない。

同じく自分の家に行っていたまなみと合流し、月乃くんと別れてしまったことや友達と気まずくなってしまったことを謝る。

入れ替わらなくても同じ結果だったかもしれないと言うまなみは、卒業記念品のイニシャル入りの万年筆を交換しようと提案する。

お互いに東京に行っても頑張ろうと励ますが、陸にとってはまなみがいない生活が始まるのが不安だった。。。

 

男女入れ替わり系だと最後には元に戻れてハッピーエンドなのですが、このお話では最後まで戻ることがないです。

それどころかお互いが違う性別を全うしようとすると言う、前例がない流れのお話です。

違う環境に適応してしまうところがなんというか今っぽいです。

陸になったまなみは、早い段階から陸として生きていくと吹っ切っているようだし、まなみになった陸に至っては、大学デビューのために美容を研究したり、最終的には結婚して子供まで設けているのですから。

しかも陸は田崎と一晩を過ごすと言う大胆な行動にも出ます。

同性の友達とそうなろうと思う?と言う感じですが、見た目が女性になるとそういう心理になるのでしょうか。

そんなことがありながら、そこまでに至る陸側の葛藤がすごくて、やっぱり女性の方が肝が据わっているなと思いました。

自分ならどうするかと考えると、同じく早々に諦めて男性として生きることを楽しむかもしれないです。

「あの人になれたらな」とか思うことが誰もがあると思いますが、実際に他人と入れ替わってしまったこうなるだろうなと言う疑似体験ができるお話でした。

話的にそこまで大事件が起こらない、日常系のお話だったこともあって、リアルに体験出来た気がします。

 

気になった方は是非読んでみて下さい。