俺ではない炎上 〜インターネットは怖い〜
今回は、朝倉秋成さんの「俺ではない炎上」を読みました。
「6人の嘘つきな大学生」を読んでとても面白かったので、こちらも面白いはず!
以下、あらすじと感想。
大学生の住吉初羽馬はネットで腹から血を流し倒れている画像のツイートを見つける。
あまりに本物っぽかったため、警察に通報した方がいいとリツイートした。
そのアカウントは山縣泰介という名の人物らしく、ツイート内容からハウスメーカーの営業本部長で住んでいる場所まで特定されている。
山縣泰介はコンテナハウスのショールームで担当の青江に日本語の使い方がおかしいとパンフレットに関してクレームをつけていた。
会社に戻るとみんなの様子がおかしく、支社長からは泰介のTwitterが炎上していると指摘され叱責を受けるが、泰介はTwitterを使ったことがないどころかインターネット自体が苦手だった。
全く身に覚えがないと主張するも自宅謹慎を言い渡され家に戻ると、家にも野次馬が集まっていた。
警察に通報して野次馬を追い払ってもらおうとするが、逆に家の中を見せるように言われ、拒否してホテルの部屋に逃げ込む。
改めて騒ぎになっているアカウントを見てみると、自分のゴルフバッグや庭の花など、どう見ても泰介が運営していると思わせるものだった。
「からにえなくさに持っていくかは考え中」と言う意味不明の言葉も書かれている。
そこへ妻の茉由子から電話があり、娘の夏実にも無実だから堂々としているように伝えろと言う。
小学校5年生の山縣夏実は職員室で父の騒動について知らされる。
そのことでショックを受け、教室に戻るとその事件をクラスメイトが噂しているのを耳にする。
いたたまれなくなり早退し、祖父母の家に避難することになった。
泰介はホテルの部屋でセザキハルヤと言う人物からの手紙を見ていた。
どうしても辛くなったらと言う内容と数字が書いてある手紙だった。
本当に死体が出てきてしまったのだが、泰介が事件の夜にランニングで訪れていた公園のトイレから出たと報道されていた。
必要なものを取りに一度家に戻ると、郵便ポストに倉庫の鍵が入っていた。
倉庫を開けてみると、そこにはビニール袋に入った公園のものとは別の死体が入っていた。
通行人に目撃され驚いて車でその場から逃げ出した。
刑事の六浦と堀は山縣家の家族に話を聞いていた。
茉由子は泰介の車が乗り捨てられ着ていたスーツが脱ぎ捨てられていたことを知らされるが、着替えに何を持っていたかやその近くの知り合いを尋ねられても何も答えることができなかった。
そのせいで母と喧嘩になり、最初から結婚に反対だったと言われてしまう。
しかし六浦は事件の発端となったマッチングアプリに提出している身分証がマイナンバーカードなことに違和感を覚え、さらにTwitterへ投稿が必ず自宅のルーター経由だったことに引っ掛かりを感じていた。
堀は泰介が犯人だと思い込んでいるため、この意見は一蹴されてしまう。
車を乗り捨てた泰介はスポーツウエアに着替え、ランニングを日課としているため走って移動していた。
走り疲れて路地で休んでいると、スナックのママに声を掛けられ店に入れてもらう。
インターネットを見ないママは息子がいるが、今は留守でいつ帰るかわからないと言う。
腹ごしらえをすると眠ってしまい、その間に息子が帰っていた。
外で泰介のことで言い争っているのを聞き、その場にあった服を拝借して裏口から間一髪逃げ出した。
大学近くの展望台で土曜日の午前に初羽馬はサークル仲間と定例会議を行っていた。
そこへサクラ(んぼ)と言うアカウントからダイレクトメッセージが届く。
以前に「ネットでの出会いを考えるシンポジウム」に参加した女性だと思い出し、会議の後会う約束をする。
会ってみると山縣泰介を探すのを手伝ってほしいと言われ面食らう。
どうしてもと頼まれ、泰介が目撃された場所を車で回ることになってしまう。
山縣夏実は祖父母の家で和室に籠って過ごしていた。
そこへクラスメイトのえばたんこと江波戸琢哉が外から声を掛けてきた。
今回の事件の犯人がわかるかもしれないと言うえばたんの言葉に、夏実はこっそり祖父母の家を抜け出す。
えばたんの祖父が怪しい人物を目撃し、逃げられてしまったが「瓦屋根が3つ。その中の『からにえなくさ』が目印です」と書いたメモを落としていった。
祖父はからにえなくさが何かはわからないが、怪しい人物は展望台行きのバスに乗っていったと教えてくれた。
早速二人で展望台へ向かい、からにえなくさを知っている人を探して声をかけるが見つからない。
しかし男子大学生からは漢字で書くのかもしれないと言う情報と、アニメの主人公が持つ正義のバッジをもらう。
そしてえばたんは夏実の本当の家の方で調べ物をしようと提案する。
初羽馬はサクラになぜ山縣泰介を探しているのかと聞くと、被害者の女性が同級生だったから許せないと話す。
ネットの情報を頼りに行き先を探すが、急ブレーキをかけた時にサクラの荷物が飛び出し、包丁を持っているのを見てしまう。
刑事の六浦は、TwitterがAndroid搭載のウォークマンから投稿されていることに気付き、茉由子にウォークマンを持っているか尋ねる。
泰介は以前ウォークマンを使っていたことがあるが最近見かけていないと言う。
そして泰介には敵が多かったという話をする。
その頃泰介は昔一緒に働いていた部下の家を訪ねていた。
案の定警戒されるが、SIMの入っていないスマホをもらう。
恨みを持っていそうな人物について尋ねると、かなりの人数が泰介を恨んでいることがわかり落ち込み、他者への態度を反省する。
行く先を迷うが、コンテナハウスのショールームに向かうことにする。
初羽馬は包丁のことをサクラに問いただすと、護身用だと言われるが、サクラは山縣泰介を殺すつもりなのではないかと思う。
ネットで調べるうちに、サクラの友人の被害者はマッチングアプリを利用してパパ活をしていたことや、サクラが吹奏楽部だと言っていたのに陸上部だったことがわかり、サクラを疑い始める。
そしてツイートアクティビティのアイコンから、山形泰介のものと思われていたアカウントを操作しているのがサクラだと確信した。
しかし逃げることが出来ず、コンテナハウスのショールームに行ってほしいと言われ車で向かうことになってしまう。
コンテナハウスに忍び込むことに聖子した泰介だったが、初羽馬とサクラと青江が外で言い争っているのを見つける。
そして青江に見つかってしまうが、ツイートの日本語が間違えた使い方なことから、青江は泰介を犯人だとは思っていなかった。
セザキハルヤからの手紙から、数字は座標ではないかということになり泰介はそこへ向かうことになる。
そこで待っていたものとは。そして真犯人は誰なのか。。。
読み終わったらもう一度読んでしまうお話でした。
時間のトリックで惑わされ、普通に騙されてしまいました!
逃亡のドキドキ感と物語のスピード感が凄く、あっという間に読み終わってしまいます。
同時にインターネットの情報の怖さがよく分かります。
最近もママチャリのお母さんが特定されるようなことがありましたが、それだって本当の情報かどうか分からないですよね。
私も同じようなことがあって、アパレル会社で働いていた頃にドラマの衣装に小物を提供したのですが、それを特定する人がいてここの会社のものだよと書いてあったのですが、全く違う会社が書かれていたということがありました。
自信満々に書かれたらそれが真実のようになってしまい、そのまま広がってしまうというのがネットの情報の怖いところでもあり、手軽に情報を受け取れる便利さでもある。
インターネットが存在している限りこのようなことが起こるのは止められないと思いますが、もし自分が知らないうちに殺人犯にされてしまったらと思うとゾッとしますよね。
とても考えさせられるテーマな上にストーリーも面白く、トリックもよく出来ている1冊でした。
気になった方は是非読んでみてください。