「ワぁ、ゴッホになるッ!」
1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。
しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。
そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくーー。
墨を磨り支え続けた妻チヤの目線から、日本が誇るアーティスト棟方志功を描く。
感涙のアート小説。
原田マハ著
棟方志功って仏像の版画が美術の教科書に載ってたな。
そのくらいの知識しか持ち合わせず読みました。
読んでみたら芸術家としても熱い人で、何より超愛妻家!
「板上に咲く」は、棟方志功の生涯を、妻チヤ目線で描いたお話です。
棟方志功がどのように素晴らしい作品を生み出していったのか、という話です。
印象に残ったのは、「東北経鬼門版画屏風」を作った時のエピソード。
まな板を彫って120枚の絵をつなげて作った作品だそうです。
結果、柳宗悦にはウケが悪くて展覧会には一部しか飾ってもらえなかったという話が出てきます。
そんなの見たくなるに決まってるでしょうが!
もう一つ見てみたくなった作品は、「釈迦十大弟子」です。
戦禍の中、妻チヤが守り通した作品なのですが、”芸術品”だと疎開先に送ってもらえないので椅子に板木を括り付けて”家財道具”として送った、というエピソードがとても好きです。
そこまでして、そして命をかけて守った作品なんて、パワーを感じるに違いない!
そしてこの夫婦の絆がまたいい!
チヤは友人の家で棟方志功に出会い、社会人になってからまた偶然再会し、なかなか東京に呼び寄せてくれない夫に業を煮やして押しかけて、貧乏をしながらも家族を守り、戦火を掻い潜り生き延びる。
ゴッホになりたい夫を信じる妻、その愛を作品を創ることで返す夫。
もちろん最後の部分にも感動するのですが、私が好きなのはプロポーズに新聞を使っちゃうところ笑
この辺りは読んでからのお楽しみにして下さい。
原田マハ先生はやっぱり美術系のお話が一番好き。
読めばまるで目の前にその絵が現れるかのような描写です。
版画好きな人もそうでない人も必ず楽しめる作品だと思います。
ちなみに、Audibleでは女優の渡辺えりさんが朗読しています。
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